DIARY>2007年6月

>6/14(木)

 電車を降りて駅を出ると快晴。雪が積もっている。あおむけになって地面を蹴って背中で進む。走るより速くて意外に進む。楽しくなって起き上がってみると雪面は犬のオシッコだらけ。横道を入ったところにはフンまで見える。こりゃ背中でオシッコを轢いた可能性があるぞとちょっとあせる。歩道橋を降りて見上げた空は青いかと思いきや鈍い鉛色。太陽の周りに白いコロナ状がぼんやり見える。


>6/23(土)

 麻薬を売ることになる。とはいえ当然ながら犯罪なので、できれば逃げたくて仕方ない。指定された場所で指定された子供に会いに行くと、言われたとおり子供がいて、マウンテンバイクに乗っている。やたらこまっしゃくれたガキで、慣れた手つきでコンビニのビニール袋に入ったクスリの袋(小麦粉か何かの袋ぐらいの大きさ)を私に渡すとにやっとして行ってしまう。どうしたものかとしばらく逡巡するが、やはり引っ込みがつかなくなってしまって、買い取り人のいる店に向かう。道々、ばれたらどうしようと冷や汗しきり。今降りれば間に合う気がするのだ。だが、よく考えたらこうやって麻薬を運んでる段階ですでに犯罪なのである。足取り重く入った指定の店は流行りのアジア風雑貨屋で、色とりどりの布カバンなんかがにぎやかに下がっている。店員に合言葉を言うと、店長が仕切ってるからといって奥に連れて行かれる。その扉だの廊下だのがまた狭くて薄暗く、否応なしに不安をあおる。入った部屋はやくざの事務所の趣で、いかにもやくざ然としたメガネに派手なスーツのおっさんが正面の机にどっかと座っている。コンビニ袋入りのクスリを渡すと、マジックで書かれた価格表を見せられる。1キロ3,500円ほどで、ああこれならたとえお金貰ったとしても返して足抜けできる値段だと一瞬安堵するも、相手が相手なので「やめます」の一言がどうしても出ない。相手はお金をくれる代りに私の財布を持っていってしまう。証拠のつもりなのだろう。高い財布ではないがあの中には免許証だの何だのがあるし、何より昔学校の入学祝に親が買ってくれたものなのだった。涙が出そうになる。


>6/24(日)

 夜9時から塾の授業が始まるのに家でだらだらしていて、気づいたらもう9時。自転車で30分はかかるのだ。「しかたないわね」と母に怒られる。


>6/27(水)

 犬が死んで半年になるわけだが、家の中で飼っていたもので食事時になると食卓の脇で食い物を要求されていたその時分の癖が抜けないとみえ、父が食い物を一口大にちぎっておくのを見る。あーそういやそうやって食わせてたなと思ってずいぶん泣ける。


>6/28(木)

 快晴。ふわふわのウサギの巨大な頭が空を飛んでいる。耳と襟元の毛が翼になっていて、つまるところそれはグライダーなのである。よく見るとガードをつけた人が乗っているのが見える。男性かと思ったが目を凝らせば老婦人で、空に大写しになった顔を見るととても品のいい方である。笑顔でこちらに手を振ってきたのでいい気分になって振り返す。その後その人の親戚という人に聞いたことには、その老婦人は亡くなったらしい。ちょうど飛行してた頃だなあと感慨。


DIARY>2007年6月