虚空には太陽ただ一つ。
痛いほどの日差しの中、音もない街の影。
何の変哲もない建物の群れ。どこにでもある街の姿。
ただ人だけがいない。
ただ ひとだけが いない……
* * *
死体死体したいシタイ家じゅう道じゅう村じゅう死体まっくろこげてこげてK・O・G・E・T・EヒトネコイヌカラスこげてこげてK・O・G・E・T・Eイエサクナヤニグルマみんなみんなみんなみんなみんなまっくろ 真っ黒に 横たわって 手 足 からだ のばし さしのべ
みんなやけて すみ 炭 はい 灰 ・ ・ ・
ASH!
そらは はれている
どこからか ちょうちょ いっぴき
うごかぬ ゆびさきに
とまっ……
* * *
それはごく普通の風邪のような病気だった。
まず体がだるくなり、のどが痛くなる。危
ないなと思っているうちに熱がでて寝込
むはめになる。でも寝ていれば治った
ので、だれも気にしなかった。しか
し本当は、治ったわけではなかっ
たのだ。人間の免疫力を学んだ
ウイルスは、約一ヵ月間の潜
伏期間を終えると突如、宿
主に牙をむく。患者はあ
る日突然倒れ、そのま
ま動かなくなる。も
はや人間はなすす
べを持たず、そ
の都市の人々
はみな、一
人残らず
死に絶
えた
。
* * *
あるひとつぜん
ねむたくなって
みちにたおれて
みんなねむる
まちのひとたち
みんなねむる
みんな
ね む る …
* * *
昨日まで人間の村だったその村は、今日は小鳥たちの村になっていた。何の事はない、人間たちが小鳥になっただけだったが。彼らは、自分たちに起きたこの変化を理解できなかった。そればかりか、昨日まで話していた言葉も、その辺に散らばっている道具の使い方も、自分たちがかつては人間――羽毛とも毛皮とも、鱗ともつかぬ物を着て二本足で地上を歩きまわる動物――であった事すら忘れていた。人の体とともに人の心も消え、入れ替わりに鳥の体と心が入ってきたのだった。そして、今や彼らは小鳥なのだから人間の村にいる理由は何もなかった。一羽が舞い上がった。続いて、他の者も舞い上がった。彼らは昨日まで人間だったのだから、あの村の他に住みかはないのだが、そんな事は誰も気にしなかった。彼らは飛んだ。どこかを目指して。くるくる、ひらひら、軽やかに舞いながら……。
* * *
く
ず
れ
て
い
く
こ
の
し
ま
の
す
べ
て