●背伸び/マフラー/駄目なひと
(未)
●嫉妬/雪/甘党
やたら物置へ行きたがる少年兵を、すわ憑かれたかと先輩兵士は部屋へ閉じこめた。翌朝は真夏だというのに一面の霜、草花がみな黄色く霜枯れた。彼女の仕業だ、文字を教える約束をしたのに行かなかったからと少年兵が言い、葉を指さした。葉の一枚一枚についた傷は確かに、下手くそな文字にも見える。
●赤/雨傘/数式
彼が真っ赤なコートを着せられたのは泣き虫のせいだ。始終べそべそ湿っぽい彼は曇り空の多いこの街をなお暗くした。これで気も晴れるだろうという周囲の声に反比例して彼の嘆きは増す。僕はしんと静かな青がいいのに。と、街ですれ違う一人の女。曇天にも艶やかなそのコートは彼の望んでやまない青だ。
●ココア/白衣/サヨナラダケガ
(未)
●財布/パフェ/夜
(未)
●嘘/いじわる/ぽつり
(未)
●ベッド/ポケット/七転び
(未)
●刃物/砂糖菓子/映画
(未)
●薬/日焼け/自己防衛
(未)
●赤/落し物/はじめて
(未)
●黒/マフラー/恥ずかしい
出会った瞬間、彼女と彼は互いを理解し、二着のコートが即座に取り替えられた。赤をまとった彼女の短気も、青をまとった彼の泣き虫も相変わらずで、周囲は落胆したが、二人は相手の服の色が見えた方が便利じゃないかと意に介さず、今日も一対のコート、お揃いの赤青縞のマフラーで曇天の街を闊歩する。