WORKS三題噺まとめ>3rd Season - 続き物まとめ

>曇天の街の女と男の話

●青/煙/数式
 彼女が真っ青なコートを着せられたのは短気なせいだ。曇り空の多いこの街には始終かっかと火を吹く彼女は熱過ぎた。これで落ち着くだろうという周囲の声に彼女の苛々は加速度的に増す。あたしはぱっと明るい赤がいいのに。と、街ですれ違う一人の男。曇天にも鮮やかなそのコートは彼女の焦がれた赤だ。

●赤/雨傘/数式
 彼が真っ赤なコートを着せられたのは泣き虫のせいだ。始終べそべそ湿っぽい彼は曇り空の多いこの街をなお暗くした。これで気も晴れるだろうという周囲の声に反比例して彼の嘆きは増す。僕はしんと静かな青がいいのに。と、街ですれ違う一人の女。曇天にも艶やかなそのコートは彼の望んでやまない青だ。

●黒/マフラー/恥ずかしい
 出会った瞬間、彼女と彼は互いを理解し、二着のコートが即座に取り替えられた。赤をまとった彼女の短気も、青をまとった彼の泣き虫も相変わらずで、周囲は落胆したが、二人は相手の服の色が見えた方が便利じゃないかと意に介さず、今日も一対のコート、お揃いの赤青縞のマフラーで曇天の街を闊歩する。

END


>蒼服の娘と少年兵の話

●青/雪/はつこい
 幽霊話のある兵舎の物置へ度胸試しに放り込まれた少年兵が翌朝、真夏だというのに凍死寸前で見つかった。なんでも、青服を着た見知らぬ娘に、氷のように冷え切った躰で抱きつかれたそうだ。お前逃げなかったとこを見るとまんざらじゃないなと笑う先輩に少年兵は顔を赤らめ、寒そうだったのでと呟いた。

●嫉妬/雪/甘党
 やたら物置へ行きたがる少年兵を、すわ憑かれたかと先輩兵士は部屋へ閉じこめた。翌朝は真夏だというのに一面の霜、草花がみな黄色く霜枯れた。彼女の仕業だ、文字を教える約束をしたのに行かなかったからと少年兵が言い、葉を指さした。葉の一枚一枚についた傷は確かに、下手くそな文字にも見える。

●黒猫/雪/自己防衛
 老兵の話では、昔の政変で失脚した将軍の愛妾の少女が捕まり例の物置で将軍の居所を尋問された。反乱側は新雪の蒼い陰でもって染めた特注の拷問服を彼女に着せたが、彼女が文盲の唖者と判ったのは凍死後だった。猫のように丸まって寄り添う少女の体の冷たさに顔色も変えず、少年兵は文字を教えている。


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