色々なバッドエンドを全力でハッピーエンドにする挑戦。全クリしたので置いておきます。セイ名義。お題借り元:こちら
●互いに異世界で生まれた二人が恋に落ちるも、異種に触れると消滅してしまう
恋に落ちた男と女は生まれた世界が異なり、触れ合うとどちらも消滅してしまう。考えに考えた末、男は自分の世界から野菜や動物を、女は自分の世界から水を持ち出した。水で育てた野菜や動物を毎日食べ続けた二人の体の細胞が二つの世界で満ちた日、二人の指がそっと絡まった。
●敵をその場で倒せば恋人は助かるが、心音爆弾が作動して巻き込まれてしまう
「恋人を解放したくばワシを倒すがよい。だがワシの心音が止まればこの心臓に付けた爆弾で貴様も終りだ」高笑いの敵を主人公はその場に押し倒す。「な、何を」「彼女とはもう冷めている。俺が好きなのは…お前だ」高まる心音、燃え上がる愛。元恋人は主人公から無事解放された。
●窓の無い部屋に監禁されている
小国の姫は側室として帝国に嫁いだ。夫たる皇太子は存外優しく、彼女の館へ庭を造った。柱と屋根だけのあずまやを抜ける風は芳しく、そこで彼女は咲き乱れる花を刺繍し続けた。人質の手慰みだったその刺繍が評判を呼び、今では正室と彼女があずまやで仲良く針を動かしている。
●毒を飲まないと人質に取られている相方が処刑される
俺が毒を飲めばいいんだな? その代り、せめてプディングに混ぜてくれ。果物たっぷりの手作りの奴だ。…OK、いい匂いだね。プロ顔負けだよお前。そうなると毒が邪魔だな、こんな物入れずに一緒に食おうぜ。相方も呼んでいいか? …いや旨い、驚いたよ。お礼に紅茶淹れるぜ。
●家の繁栄のために嫁がされそうな主人公が、嫁入りの前日に恋人と心中を図ろうとする
実業家との結婚を明日に控えた没落貴族の娘は恋人の画家と投身を図るも、崖の上の先客はなんと実業家とメイド。ここに至り四者は団結、実業家をパトロンにした画家は都会で大成、娘はメイドの腕前を借り実家の料理を世に広めた。名を成した四者は望む相手と結婚、両家は栄えた。
●鬼の子供と呼ばれて吊るされかけている
鬼の子は友達欲しさに人間の村へ入ったが、どこもかしこも老人ばかりで子供は見当らない。声をかけてきた老婆に訊くと、人間は鬼以上の少子高齢化で、若者はみな街へ出たそうだ。老人たちは鬼と知ってなお久々の子供の姿を喜び、ぶらんこに乗せて代わる代わる背を押してくれる。
●嘘を吐かないと命を落としてしまう奇病にかかり、恋人に言葉をかけられなくなった
紅い松ぼっくりが生っていたと彼が言うので連れられて見に行くと、椿の蕾が確かに松ぼっくりに見える。この人にかかると万事この調子で、菜の花畑は海になるしシーツ干しも船の出帆だ。人は彼の病を哀れむが、彼がもたらすのは嘘でなく別の真実だ。「愛してる」の代わり、彼は私の瞼に幾度も口付ける。
●主人公が言葉も含める全ての記憶を失っている
高度なAIを持つロボットと人類が共存する社会。一台のロボットが引退の日を迎えた。他のAIのICチップのテスト用機体たる彼には自分のAI…人格は無い。今まで数限りないAIが空っぽの彼を通過し、世に出て行った。「今度こそお前の番だよ」担当技術者は彼専用に造ったAIをそっと入れてやる。
●全面ガラス張りの箱に入れられ、海に沈められてしまう
最新の海中調査ケージは全方向見える強化ガラスだ。酸素・気圧も自動調整で、通常服のまま海へ潜れる。紺碧の奥に透ける遺跡は恐らく西暦2000年代の都市だ。地殻変動で大地が海中に没し、人類が月に移って千年。やっと地球へ戻れた我々調査団へ、海底都市の新住民たる人魚たちが親しげに手を振る。
●画面の中に閉じ込められてしまい、デジタルとリアルとで相方と引き離されてしまう
兵器用細菌の漏洩によるパンデミックを避け、全人類は冷凍睡眠中だ。主任研究者の私だけ人格をスパコンに移し、人間だった頃の自分の身体を実験台に実験と計算、そして冷凍睡眠装置の維持管理を千年続けた。ようやく細菌を根絶、同胞達の眠りを覚ます。父さんお早う。娘の声はマイク越しにすら温かだ。
●自分の記憶と引き換えに他人を延命できる体質の主人公が恋人の病を治そうとしている
僕らの夜毎の夢は別の人生で、それを食べることは別の命を得ることだ。僕は極上の夢ばかり選んで彼女に贈り、それを呑んだ彼女は見えた人生を楽しげに教えてくれる。それはもう僕の記憶に無いが、僕は彼女との人生ただ一つが続けばいい。見た夢を忘れる人は皆、きっと愛する誰かに命を与えているのだ。
●毒を発する特殊体質を持った主人公が人を愛してしまう
毎晩戸口に銀貨一枚置かれるので確かめると白蛇が持ってきた。僕への結納金で、毎日自分の毒を薬屋に売るとか。だから私安全です、証拠に銀が曇りませんと言う白蛇は、毒抜きに無理したかガリガリだ。卵を買っては喰わせ、脱皮した皮だけ結納に貰った。銀貨は使い果したのに以来不思議と金に困らない。
●ガラス玉に閉じ込められ、外に声が届かず割られると命を落としてしまう
ガラスの一輪差しの薔薇は仲間が欲しかった。その大輪を褒める人間は薔薇の心に気付かず虚しい日が過ぎた。ある日猫が一輪差しを倒し、薔薇は近くの金魚鉢へ落ちた。孤独な金魚は花弁を仲間と慕い、寄り添った。猫に気づいた主人は鉢を花ごと庭の池に空け、金魚と薔薇は沢山の魚や花と舞い泳いでいる。
●主人公が感情を1つずつ失っていく奇病にかかってしまった
戦好きの王は魔女と、感情一つ代償に国一つ得る契約をした。恐怖の代り東国を得て裏切りに怯えなくなり、悲哀の代り西国を得て友の無さを嘆かなくなり、考えた。怒り無しで戦は出来ず、喜びを失うのも嫌で、今、自分は人を信じられる。王は魔女に頼み国を全て解放し、感情が戻った後も戦をしなかった。
●愛しい人の血液を飲まなければ消滅してしまう吸血鬼の恋人が病に伏せている
これは私の血で染めたの、小指に巻けば貴方は消えない。恋人は鮮やかな赤糸を贈った。あれは僕が噛んで不死にした、落ちない限り君は死なない。吸血鬼は鮮やかな緑葉を指した。糸の赤は染料だし、陽を必要とする葉は吸血鬼が不死にしても無意味だ。が、吸血鬼も消さず恋人も治したものこそ、その嘘だ。
●龍神に生贄として嫁がなければ日照りで村が滅びる
人間が生贄の娘をよこしたが私には妻がいるし、まず雨乞に生贄が必要という話が迷信なのだ。途方に暮れる娘に私達夫婦は謎を出した。嫁ぐことは人生を賭けることだ。お前は何に嫁ぐ? 人里へ戻った娘は街で学び、ついに村へ用水技術をもたらした。水豊かな村の空を、私達夫婦が二重の虹となって舞う。
●突如世界が分断され、恋人達が無理やり引き離されてしまった
民族間の揉め事から街が壁で仕切られ三年。レース編みの女は壁をレース掛けにし、やがて壁はレースで覆われた。ある日街の者がレースをめくると、壁は女と向う側の恋人に取り除かれていた。だがレースの仕切りは重宝で、通行自由だし嫌な者は顔を見ずに済む。老人達はレース越しに日向ぼっこするのだ。
●機械化されてしまった主人公がプログラムの裏で大事な人に想いを伝えようとしている
俊一くん久しぶり、母です。独身の貴方が死後も心配で冷蔵庫に取り憑きました。ブーンという音をこうして言葉にできるのでお喋りしますね。中段の煮物、もう駄目なので処分しなさい。ご飯は平べったくして冷凍の方が日持ちします。それからコンニャクが大量にありますが、くれぐれも無駄にしないこと。
●行方不明になった恋人を見つけ出したら洗脳されている
登校したら前日机に描いた落書きが足されていた。夜間ここに座る定時制の人らしく、机は通信の場となった。お薦めの曲やTV、試験前には応援。通信で埋まった大事な机はある日備品替えで廃棄され、私は新品の机に重い筆でそれを書いた。翌日登校すると定時制の人たちの寄せ書きや絵が机を埋めていた。
●恋人が敵にホルマリン漬けにされている
闘病の果て力尽きた彼女はばらばらにされホルマリン液に眠っている。恋人がこんな姿で辛くないか、横の友人が言う。未だ治療法のない自分の体を標本にして役立てる事こそ彼女の遺言で、医大の友人は見事な腕で応じてくれた。君こそ大丈夫か、僕の言葉に、かつて恋敵だった彼は、彼女の夢だからと呟く。
●物の怪が人の子に惚れるも、近付くと精気を吸い取って衰弱させてしまう
彼の服のポケット全てをメガネザル似の妖怪達が占めている。常に彼の精気を食うため手放せないとか。一生連れ歩く気かと訊くと、毎日の習慣と言えと返された。疲れるは疲れるが人間生きてるだけで消耗するし、体内には元々微生物が無数にいる。見ろよ俺達の体は街なんだぜと笑う彼は前より顔色がいい。
●主人公が視力を失い、相方が声を失っている
山彦は透明な妖で、声で意思を通わす。生れつき声が出ず仲間外れの山彦は歌唄いの若者の魂を狙ったが、盲目の若者は容易く気配を察してその頬に触れ、お前の居るのがちゃんと判ると言った。山彦は若者を喜ばそうと野花をばら撒き若者の鼻へ押し付ける。傍目には若者の周りを花嵐が狂う様だけが見える。
●どちらかが命を断たないと開かない部屋で段々酸素が薄くなっている
室内の酸素濃度が安全値に下がり、私と同僚はマスクを外した。我々に酸素は猛毒で、宇宙船がこの地球に不時着した時は死を覚悟した。が、地球人は友好的で、完全密閉の大気調整室を貸してくれ、異常がある時以外開けないと約束してくれた。一息ついた横で通信機が鳴る。母星からの救援隊派遣の連絡だ。