むかしむかし、あるところにアセンという男の子がいた。
アセンはとてもかしこい子で、大人さえかなわないことがあった。
あるとき、アセンの村の近くに大男が住み着いて乱暴をするようになり、村人たちだけでなく、近くを通る商人たちもみな、困り果てていた。
それを聞いて、アセンは大男のところへ出かけていった。
大男は、大きな岩でお手玉をして遊んでいたが、アセンを見ると、その岩を遠くへ放り投げて言った。
「ちび助、何をしに来た。邪魔すると頭から喰ってしまうぞ」
アセンは、大男を見上げて答えた。
「おじさんと力比べをしに来たのさ。もしぼくが勝ったら、おじさんはぼくの子分になるんだぞ」
「ふん、生意気なちびだな。そのかわり俺が勝ったら、お前は俺の子分になるんだ」
「いいともさ。じゃあ、あの木をうまく切り倒したほうが勝ちにしようよ」
そう言って、アセンは大きな木を指さした。
その木を見るなり、大男は鼻で笑った。
「なんだ、簡単じゃないか。見てろ」
そして斧を持ってくると、あっという間にその木を切り倒してしまった。
「どうだ、これで俺の勝ちだぞ」
しかし、アセンは笑って答えた。
「いいや、ぼくの勝ちさ。だってぼくは、指一本さわらずにこの木を切り倒したんだもの」
アセンにまんまと一本取られたと気づいて、大男は感心し、アセンの子分になることにした。
こうして大男は悪さをしなくなり、アセンは「かしこいアセン」と呼ばれるようになった。
END