WORKS文字書きさんに100のお題>012:ガードレール

 道路ぎわにバイクを寄せ、彼はタバコに火をつけた。
 ガードレールに寄りかかり、崖の下を覗き込む。
 目のくらむような高さ。落ちたらひとたまりもないだろう。
 ……さて、と。
 出発することにし、彼は火を消すつもりでガードレールにタバコを押し付けた。
 とたん、ガードレールが蛇のように跳ね、ぐわっと彼に巻きついた。
「なっ、わ、おわ!」
 崖下に落とされる恐怖に駆られ、彼は闇雲に手足を振り回した。
「それ」は彼を捕まえたままぶんぶんと振り回すと、ぽいと道路にほうり捨てた。
 しりもちをついたまま呆然とする彼の目の前で、「それ」は甲高い哄笑を上げながら、ひらひらと崖下に飛び去った。

 * * *

「ああ、今でも『出る』んですよ、この辺り。まだまだ辺ぴですからねぇ」
 近くの民家に駆け込んだ彼に、そこの主人はしみじみと言った。
 ――そういや、ゲゲゲの鬼太郎にそんなのがいたような。
 衝撃覚めやらぬ頭で、彼はぼんやりと考えた。


END


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