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WORKS文字書きさんに100のお題>016:シャム双生児

 彼は、いつもハイネックの服を着ている。
 それは時々はマフラーだったり、バンダナだったりするけれど。
 たまに、どうして、と訊かれたら、好きなんだ、と言うことにしている。
 そうすれば、もう誰もそれ以上は訊いてこないから。

 彼には双子の弟がいる。
 弟、といっても、「彼」がそう主張しているだけで、本当は兄のはずだったかもしれない。
 あるいは、妹? 姉? そうかもしれない。
 でも、「彼」がそう言っていることだし、彼にも異存はなかったので、今日に至るまで「彼」は彼の弟なのだった。

 彼は、若く見える、とよく言われる。
 彼の本当の年齢は三十歳だけれど、見た目は二十歳そこそこだ。
 そして弟は、今、十歳ほどに見える。
 彼らは、同じ時間を二人で分け合っている。
 だって、二人で一人なのだから。

 うららかな日差しが道に踊る日、彼はよく散歩に出かける。
 弟は、こんな天気が好きなのだ。
 公園のかたすみのベンチに腰を下ろし、彼は遊ぶ子供たちや、餌をついばむ鳩を眺める。
 そして、誰も見ていないとき、彼は首の右側に手をやり、タートルネックを少しだけ下ろす。
 そこには、
 首筋からほんの少し浮き上がるように、小さな唇、鼻、そして閉じられた両の目。
 ……十歳の少年の、顔。

 ――分かるかい、いい天気だぞ。
 心の中で、彼は弟に話しかける。
 ――分かるよ、兄さん。
 彼の心に、弟が返事をする。


END


WORKS文字書きさんに100のお題>016:シャム双生児