同じ数同士をかけて、ある数にする、その「同じ数」を「ある数」の平方根という。
例えば、√1×√1=1。よって、√1は1の平方根である。
また、1×1=1なので、√1は1でもある。
人間ふたりがかけ合わさって、一人の人間が生まれる。
このとき、1×1=1、√1×√1=1が成立する。
ちなみに、1の平方根は、√1だけではない。
「その男」からえぐった目と、「その女」から切り取った髪を、「彼女」の形見の人形に植え付ける。
新しい目と髪を得た人形はかすかに身じろぎ、僕に微笑んだ。
……やあ、おかえり。
点けっぱなしのラジオから、アナウンス。
『女子大生をひき逃げした疑いで事情聴取を受けていたカップルが行方不明に……』
今はもう、どうでもいい話。
世界から欠けた人間と、世界から欠けた人間をかけ合わせたって、新しい人間は生まれるんだ。
-√1×-√1=1。
END
※元ネタは、寺門ヒルコ様「かごめ」内「百本の指」→「017:√」より。