振られた悔しさに、彼女は彼を呪おうと試みた。
* * *
爪を切り終え、彼はゴミ箱の上で爪切りバサミを振った。さらさらと音を立ててハサミ(爪が飛ばないカバーつきだ)から爪が流れていく。
それが落ちきったのを確かめ、ハサミを仕舞おうとして……彼は、ふとその中を覗き込んだ。
カバーに覆われたハサミの奥に、切った爪が引っかかっていた。
ハサミを逆さにして、少し強く振ってみる。
少し顔をのぞかせた爪を、指でつまんで引き出そうとした。
と、ハサミの口から小さな蜘蛛が一匹、おろおろと逃げ出していった。
どっから入り込んだんだ。さして気にも留めず、彼はそのまま爪を引き出した。
蜘蛛の糸で絡められて、大量の爪の切れっ端がずるずると引き出されてきた。どれだけ引き出しても尽きることがなかった。
END