夏の日。
私は、ロボット祖母と出かける。
何年か前、祖母は心臓を患って入院したが、体のほうもずいぶん弱ってしまったので、脳だけを機械の体に移植したのだ。
だから、体はロボットでも、心は優しい祖母のままだ。
デパートで、私はロボット祖母にスニーカーを買ってもらった。
ロボット祖母の目が、どう、と訊く。
「具合いいよ、ありがとう」
私が答えると、ロボット祖母の目がかすかに光る。
ロボット祖母の機械の脚には、もう靴は要らない。
そのあと、ロボット祖母と私は、デパートの甘味処に入る。
ロボット祖母は、私にクリームあんみつをおごってくれる。
味つきの機械油を飲みながら、ロボット祖母が、おいしいか、と訊く。
「おいしいよ」
私が答えると、ロボット祖母の目がかすかに光る。
帰り道。電車を降りると、陽の光が強くなっていた。
ロボット祖母は日傘を広げた。機械の体に、日光は良くないのだ。
「持つよ」
私はそう言い、ロボット祖母の日傘を持つ。特殊な繊維でできた日傘は重かった。
私は、ロボット祖母に日傘を差しかけ、午後の街を並んで歩いた。
かげろうの立つ通りの向こうに、家の門が見える。
「ここ、段差あるよ」
そう言って、私は、ロボット祖母の手を取る。
END