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WORKS文字書きさんに100のお題>053:壊れた時計

「ネタは挙がってるんだ」
 暑苦しい取調室で、刑事は言った。
「な、何言ってるんですか刑事さん」
 その向かいで、彼はあわてて抗議した。
「お前のズボンのポケットから、こいつが出てきた」
 彼を無視して、刑事はビニール袋に入った腕時計を机に置いた。
「そ、それは、道で拾ったんですよ、3時半ごろ」
「ほう。で?」
「3時半ごろ大通りで拾って、それから1時間ぐらいぶらぶらしてたら、いきなり警察に引っぱられて……で、たった今初めて、刑事さんが『A社の社長が4時頃殺された、犯人はお前だ』って……」
「お前、その時間帯のアリバイは」
「……ないです。でも逆に『その時間帯に犯行現場にいなかったかも知れない』とも言えるでしょ?」
「その通りだ。だがな」
 刑事はそこでひと呼吸した。その仕草に、彼はびくりと身をすくめた。
「この時計、アンティークでな。ネジさえ巻いときゃめったに狂うことはないんだそうだ。でも、こいつにゃ一つだけ弱点があってな」
 刑事は、じろりと彼をにらんだ。
「今日はえらく暑いなあ。この夏最高だそうだ」
「そ、それが何の……」
「お前のズボンのポケット、ずいぶん蒸れてたよな。パクられた時汗びっしょりだったもんな、お前」
「…………」
 刑事は、時計の文字盤を指でたたいた。
「見な」
 それを見た彼は、そのまま凍りついた。
 時計は、犯行推定時刻――4時を指したまま停止していた。
「『高温多湿』て奴にえらく弱いらしいんだわ、これが」


END


WORKS文字書きさんに100のお題>053:壊れた時計