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WORKS文字書きさんに100のお題>056:踏切

 かん……かん……かん……かん……
 乾いた音が響く。

 ――3、2、1で飛び込むんだ。なに、怖いのなんてほんの一瞬さ。
 教えてもらったその言葉を、頭の中で繰り返す。
 今にも口から飛び出しそうな心臓と、震える足と。
 それらを必死で抑えながら、彼はただ前方をにらみすえ、走るペースをぐっと上げる。

 ……かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん(3、)、かん(2、)、かん(1、)、

 かんっ(跳!)!
 ……ごおおおおおおおおおおおおおおおおおううぅぅぅぅ!

 耳をつんざく風の音。彼は、ばっと翼を開いた。
 とたん、ふわりと体が軽くなる。
(――やった!!)

 回廊の端まで飛んで帰った彼に、先生は満足げにうなずいた。
「よし、踏み切るときのコツは分かったな。あとは一人で飛べるだろう?」
「はいっ!」
 彼――新米の天使は、元気よく答えた。
「じゃ、私は先に帰るからな」
 先生はひらひらと手を振って、回廊を歩いていった。

 彼は、回廊のふちから下を覗き込んだ。
 目もくらむほどの高さ。天国の、ここはまさしく「へり」だった。
 ……さっき、ここから飛んだんだ。
 彼は誇らしげに立ち上がると、先生の後を追って回廊を走っていった。
 軽い足音が、回廊に響く。
 かん、かん、かん、かん……


END


WORKS文字書きさんに100のお題>056:踏切