「あ、ねえ、ひこうきぐも」 指さして、少女は母親に言った。 見上げると、はるか頭上に細く細く、ひとすじ。 「違うわよ」 笑いながら母親は答え、彼女の髪をなでる。 「あれは、舟の跡よ」 「ふうん」 少女は尾びれをゆらめかせ、その跡のほう―― 水面にむかって泳いでいった。 END