WORKS文字書きさんに100のお題>060:轍

「あ、ねえ、ひこうきぐも」

 指さして、少女は母親に言った。
 見上げると、はるか頭上に細く細く、ひとすじ。

「違うわよ」

 笑いながら母親は答え、彼女の髪をなでる。

「あれは、舟の跡よ」
「ふうん」

 少女は尾びれをゆらめかせ、その跡のほう――
 水面にむかって泳いでいった。


END


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