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WORKS文字書きさんに100のお題>068:蝉の死骸

 路上の蝉の抜け殻がごそごそ動くのでひっくり返したら、小さなきりぎりすが入っていた。
 なんでもこれに包まっていれば七冬を越せるという噂があるそうで、ひとつ実地に試してみる気らしい。絵空事だと笑おうとしたが、人間界にもきりぎりすを不当におとしめた寓話があるのを思い出してやめた。何にせよ、連中が冬支度の概念を持たないという認識は改めねばならないようだ。

 だがもし本当にこいつが七年間を生き延びて地上に戻ってきたとして、生きている同類は七代あとの子孫であり、こいつの知り合いはみな死に絶えているはずなのだ。それを訊くと、もし自分の実験が成功して後の礎になるなら構わないという。芭蕉の詠んだ兜の下の奴も、ことによると同じ心でいたのだろうか。


END


WORKS文字書きさんに100のお題>068:蝉の死骸