地元から宅急便が届いた。『中身:リンゴ』のラベル。
ずしりとした重み。歩くたびにごとごとという手応え。まぎれもないリンゴだ。
「お、何それ?」
同居の友人の言葉に、俺は返してやる。
「爆弾」
ははっ、と笑いながら、奴は俺の目を見る。
俺も笑いながら、奴の目を見る。
沈黙。
「……なあ、冗談だろ?」
顔だけは笑ったまま、友人が訊く。
満面の笑みのまま、俺は答えない。
手の中の箱は、嘘のように軽い。中からかち、かち、とセコンドの音。
「……なあ?」
顔だけは笑ったまま、友人が訊く。
満面の笑みのまま、俺は答えない。
心の中で慎重に数える。
……3、2、1、
「はは、冗談だよっ。冗談に決まってるだろが」
その途端、箱がどっと重くなる。よろけた拍子に、ごとごととリンゴの振動。
「あっははは! そうだよな、爆弾なわけないよな」
「ビビった? ビビったろ今?」
途方もない安堵感に、二人でげらげら笑い合う。
というわけで、話すことがみな真実になる世界に住んでいる。
チャチな手製爆弾のような危うさの積み重ねが日常で。
それに耐えかねて、俺たちは時々こんなチキンレースをやってみる。
END