WORKS文字書きさんに100のお題>082:プラスチック爆弾

 地元から宅急便が届いた。『中身:リンゴ』のラベル。
 ずしりとした重み。歩くたびにごとごとという手応え。まぎれもないリンゴだ。
「お、何それ?」
 同居の友人の言葉に、俺は返してやる。
「爆弾」
 ははっ、と笑いながら、奴は俺の目を見る。
 俺も笑いながら、奴の目を見る。

 沈黙。

「……なあ、冗談だろ?」
 顔だけは笑ったまま、友人が訊く。
 満面の笑みのまま、俺は答えない。

 手の中の箱は、嘘のように軽い。中からかち、かち、とセコンドの音。

「……なあ?」
 顔だけは笑ったまま、友人が訊く。
 満面の笑みのまま、俺は答えない。
 心の中で慎重に数える。

 ……3、2、1、

「はは、冗談だよっ。冗談に決まってるだろが」
 その途端、箱がどっと重くなる。よろけた拍子に、ごとごととリンゴの振動。
「あっははは! そうだよな、爆弾なわけないよな」
「ビビった? ビビったろ今?」
 途方もない安堵感に、二人でげらげら笑い合う。

 というわけで、話すことがみな真実になる世界に住んでいる。
 チャチな手製爆弾のような危うさの積み重ねが日常で。
 それに耐えかねて、俺たちは時々こんなチキンレースをやってみる。


END


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