WORKS文字書きさんに100のお題>093:Stand by me

 すぐ隣の人間、いやあなた以外の誰も彼もが、実はみな幽霊だとしたらどうだろう。

 世界は何らかの災厄でとうに滅び、ただ一人生き残った赤子があなただ。
 圧倒的な理不尽の前になすすべもなく命を落とした者たちは、せめてあなた一人でも生かそうと、荒廃した地を楽園と映す。

 あなたの目に映る華やかな街、緑の山々、遠景と思われたそれらは目の前三寸の幻に過ぎず、歩道と思って歩く荒れ果てた大地にはただあなたの足跡だけが残る。
 たわいない冗談を言い合う友人たち、時に喧嘩もするがいとおしい家族。そして周りの、世界中の、ありとあらゆる人と物。みな命ない彼らが入れ代わり立ち代わり演じる大きな影絵だ。

 今は面影もないそんなものの姿で、七十億人の幽霊たちがあなた一人の守をする。


END


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