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WORKS文字書きさんに100のお題>098:墓碑銘

 世間では「呪われた一族」として有名だった。
 その家に生まれた男子がみな不幸な死に方をするためだった。
 戦死、病死、事故死に暗殺、あるいは刑死。
 家系図を紐解けば、そこはさながら変死の見本市だった。

 そんな中で、ただ一人の例外が彼だった。
 人並みに怪我もし、何度か病気もしたものの、そのいずれも大事に至ることなく、妻と三人の子にも恵まれた彼は、ほかでもない「寿命」によって、その幸福な生涯を今まさに終えようとしていた。
 なんと幸せなことよ、と人々は噂した。
 あの一族に生まれながら、満ち足りて天寿をまっとうできるとは。まるで奇跡のようだ、いや奇跡そのものだ。そもそもおかしいではないか、あの血を引くものが怪死しないなど。これはもしかしたら、赤子のころに取り違えられたのかも。いや、さもなくば母君の不義の子かも知れぬぞ。あるいは、本人はとうに殺されていて、赤の他人がなり代わっておったのかも。でなければ、……

 彼の墓にはこう記された。
「不幸ならざりしによって不幸に死せるもの、ここに眠る」


END


WORKS文字書きさんに100のお題>098:墓碑銘