世間では「呪われた一族」として有名だった。
その家に生まれた男子がみな不幸な死に方をするためだった。
戦死、病死、事故死に暗殺、あるいは刑死。
家系図を紐解けば、そこはさながら変死の見本市だった。
そんな中で、ただ一人の例外が彼だった。
人並みに怪我もし、何度か病気もしたものの、そのいずれも大事に至ることなく、妻と三人の子にも恵まれた彼は、ほかでもない「寿命」によって、その幸福な生涯を今まさに終えようとしていた。
なんと幸せなことよ、と人々は噂した。
あの一族に生まれながら、満ち足りて天寿をまっとうできるとは。まるで奇跡のようだ、いや奇跡そのものだ。そもそもおかしいではないか、あの血を引くものが怪死しないなど。これはもしかしたら、赤子のころに取り違えられたのかも。いや、さもなくば母君の不義の子かも知れぬぞ。あるいは、本人はとうに殺されていて、赤の他人がなり代わっておったのかも。でなければ、……
彼の墓にはこう記された。
「不幸ならざりしによって不幸に死せるもの、ここに眠る」
END