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WORKSイベント即興小説>有田焼(佐賀県)

 ふらっと遊びに行った祖母宅の急須が変わっていた。前のは数日前、流しに落として割ってしまったという。
 馴染みの急須だった。白地に藍の梅模様で、蓋のつまみは小さな鳥のかたちをしている。家族が揃うたび祖母はそれでお茶を淹れてくれたし、お茶漬けを作るのにも活躍した。
 聞けば、亡くなった祖父と九州を旅行した時、気に入って買った有田焼だそうだ。

 ――蓋は無事だったからああして飾ってるけど、それでもねえ。

 祖母はため息をつき、仏壇に目をやった。祖父の写真の下で、くだんの小鳥が所在無げにこちらを見上げている。

 * * *

 その姿が何となく気にかかり、少々味気ないがネットショップのお世話になった。
 翌週、届いた荷物をぶら下げて訪ねた私を、祖母はいつもどおり出迎えてくれたが、中身を見せると声のトーンが一気に弾んだ。

 ――あら、まあ。ありがとう。そっくりだわねえ。

 蓋に小鳥のついた、有田焼の急須だ。「そっくり」というわけでもないが、幸い似たのが手に入った。
 祖母はさっそくお茶を淹れ、たまには泊まっていきなさいよと有難い言葉までくれたので、私はそれに甘えることにした。

 その夜、夢を見た。祖母が祖父と並んで歩いている。その周りを幾羽もの鳥が飛んでいた。みな体が黒く、羽の先だけ鮮やかに白い。
 景色は知らない街だ。が、行ったこともないくせに、九州旅行の光景だというのだけははっきり判った。

 * * *

 次の朝、目が覚めて苦笑いした。きのう茶飲み話に祖母が旅行のエピソードをずいぶん聞かせてくれたから、夢にまで出たのだ。あの白黒の鳥もアルバムに出てきた。あの地方にしかいないカササギである。
 伸びをしながら居間に顔を出すと、祖母が首をかしげながら急須を見せてくれた。

 ――これ、あなたがやってくれたの? 上手くできてること。

 見ると、蓋の小鳥が二羽に増えている。
 訳がわからず祖母の顔を見ると、祖母は割ったほうの急須の蓋を見せてくれた。こちらの小鳥は、ない。

 ――ゆうべ仏壇に並べて置いておいたんだけど、朝になったら、こんな。

 祖母の言葉に首をひねりながら、私は夢を思い出していた。カササギは七夕にまつわる鳥と、そういえば聞いたことがあるが。



END


※イベント参加者、Nさんからのリクエスト。48時間で掌編書いてますーと大言壮語した手前、大汗かきながら仕上げました。が、こうなるとぜひとも一度、佐賀の地で実物の有田焼とカササギを拝みたいものです。ありがとうございました!


WORKSイベント即興小説>有田焼(佐賀県)