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WORKSイベント即興小説>リンゴ

 買い食いをしない家だったせいか、リンゴ飴を食べたのは学生になってからだ。
 夏祭りの飴細工の屋台にかじりついていたあたしに、こっちなら買ってあげるよと言って彼がくれたのだ。初めて食べると言うと、珍獣を見る目で三回ぐらい聞き返されたけど、あたしがあの形をうまく囓れずに鼻を突っ込んでしまったのを見て彼も腑に落ちたようだ。それでも、薄い飴と水気のあるリンゴをばりばりやるのは確かに美味だし、愉快だった。

  好きなリンゴ菓子がもう一つある。簡単なコンポートもどきだ。こちらは冬場に重宝する。
 耐熱ガラスの小鉢にリンゴ一個を削ぎ切りに落とし(ついでに芯の回りに残ったのを一足先にかじってしまい)、蓋をしてレンジで五分間チン。だけ。
 だけだが、これがいいのだ。
 熱々の実は少しの歯応えを残して柔らかく、鉢の底の汁も蜜みたいになる。
 彼が遊びに来るたび作って食べさせているけれど、砂糖もないのにずいぶん甘いといつも首をかしげられる。同じやりかたで作ってみても、こうはならないらしい。
 種を明かせば、リンゴが美味しいのだ。産地の親戚が、毎年とびきりのを送ってくれる。これでなきゃ駄目だ。
 箱で来たから売るほどあるけど内緒にしている。別に、リンゴ飴で赤くなった鼻先を大笑いされた仕返しじゃない。
 うちに来るなら、またあげる。


END


※イベント参加者、Sさんからのリクエスト。外部の方からのリクエスト初めてで大変嬉しかったです。ありがとうございました!


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