夜遅く帰ってきて、暗い上がりかまちで何かに蹴っつまずいた。
ひとしきり片足で飛び跳ねながら見下ろすと、壁際に何か四角いものが投げ出されているのがぼんやり見えた。
あれか。
が、心当たりがない。
そもそも、こんな場所に物など置かない。
とりあえず壁を探り、明かりをつける。
と……
今の今まで暗がりの中に見えていたソレは、かき消すように無くなっていた。
ばかな。
もう一度明かりを落とす。
目が慣れてくると、さっきと同じ場所にぼんやりと、だが間違いなく、ソレは有った。
手を伸ばして触れると、硬い。間違いなく、有る。
明かりをつけた。
無い。
手で探る。無い。まったく触れない。
つける。
無い。
消す。
有る。
つける。無い。
消す。有る。
つける。無い。消す。有る。
つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。
やめた。
明かりを消し、ソレを手にとって見る。
絵本程度の大きさの長方形。表面がかすかに反射しているところを見ると、ガラス張りか。
ガラスの中を覗き込む。
中は中央が四角く切ってあり、よくよく目をこらすと。
ああ、確かこれは、あれだ。
昔飾っておいて、何かのはずみで捨てた絵。確か、ヨーロッパかどこかの山の風景画だ。
それがどういうわけだか、額縁ごと帰ってきたようだった。
特に珍しい絵でもなかった。が、無性に見たくなった。
明かりをつける。無い。
消す。ある。
懐中電灯を持ってきた。つける。無い。
消す。ある。
どうやら、はっきり見える程度の明かりで、テキは消えてしまうらしい。
が、はっきり見えなければしかたないのだ。
つける。無い。
消す。有る。
焦燥。
つける。無い。消す。有る。
つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。
つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。つける。無い。消す。ある。
祟ってるらしい。
END