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WORKSその他単品>写真の目

 携帯の電池カバーを無くしたと言って、級友がえらく落ち込んでいた。
 今でも買い直しはきくが問題はそこではない。彼女は転校生で、同機種の色違いを持つ前の学校の友人とカバーだけ取り替えたのだそうだ。そのカバーの裏にその友人との2ショットプリクラが貼ってあるのも見せてもらったことがある。
 凹むわー、どうしよう。この世であれしかないのに。
 死にそうな顔で嘆き悲しむ彼女に、とりあえず声をかける。

「最後に見たの、どこ? そこから探してみれば。手伝うからさ」

 ほんと? まだ暗い目だが彼女はぱっと顔を上げた。

「でもねー、五時間目の前に一回見てカバンに戻したときは無事だったんだ。で、今出してみたら、外れてるんだよね。カバンひっくり返しても出てこないし」
「出し入れのときに外れて落ちたとかじゃない? 机の周りかも」

 二人して、机の周囲をぐるぐる探した。まだ帰っていなかった他の友達にも声をかけ、クラスの床中見て回ったが、それらしい物体は見当たらない。

「教卓の中は?」

 落とし主の分からない物をひとまずそこに置くのは鉄板だ。上も中の棚も覗いたが、出てきたのはシャープペンや消しゴムなんかばかりだ。

「誰か、ゴミと間違えて捨てたとか」

 幸い清掃時間前である。ゴミ箱を二つともあさってみた。が、やはりそこにも、ない。

「カバン、どっかに持って行った?」
「それはない。移動教室なかったでしょ」
「それじゃ、やっぱり教室の中かな」

 途方にくれ、彼女は椅子に座り込んだ。捜し始めからかれこれ一時間近く経っている気がする。これだけ捜して見あたらないとなるとお手上げ状態だ。
 時間でも見ようとしたのか、彼女がふと携帯を取り上げて開いた。

「……あれ、何これ」

 待受け画面が、電源が落ちたように真っ黒になっている。

「やだ、これまで壊れた?」

 二人して携帯を覗き込む。
 いや、よく見ると画面が微かにちらついている。暗いところでカメラを起動させたときに似ていた。
 だが、カメラボタンを押すと机の上がちゃんと画面に映った。そもそもこんな明るいところで、あんなカメラ画面にはならないのだ。
 じゃあ、この待受けは一体何だろう。カメラを切ると、画面はやはりあの暗いちらつきに戻ってしまった。

「何かな、こんなの見たことない」
「待って」

 試しに自分の携帯を確かめてみようと、カバンを開けてみた――
 あ、と彼女の抑えた悲鳴が聞こえた。

「何、これ」

 彼女が画面をこちらに向けた。


 映っているのは、僕の横顔だ。


 それも、動いている。うろたえた僕の動きにそのまま合わせて。
 だがカメラではない。メインレンズは彼女のほうを向いているし、画面の上のサブレンズなら真正面から僕を捉えている角度だ。
 僕が顔の向きを変えたので、今の画面は下から見上げるアングルだ。どこだ、どこから撮ってる、これ。
 次の瞬間、僕らは同時にある疑惑にたどり着いた。
 僕は慌ててカバンを閉じようとした。が、彼女が一瞬早く、僕のカバンをもぎ取った。そのまま、空いている口から中に手を突っ込む。

 ゆっくりと取り出されたのは、彼女の携帯の電池カバー……あれほど捜した、彼女の宝物だ。

 ちょうど上を向いて、あのプリクラが貼ってあった。彼女と、友人とかいう男子高校生が映っている。
 写真の二人の目線そのままのアングルで、立ち尽くす僕が画面に横切っていく。
 どうして。どうしてこんなことが。
 彼女がぱちりとカバーをはめ戻すと、画面は元の待受けに戻った。

 彼女がカバンを投げてきた。したたか膝に当たり、僕は椅子に座り込んだ。そのまま、自分のカバンを持って駆け去る彼女を、僕は何も言えずに見つめた。

 窓の外には十一月の雪。僕の恋は終わった。


END


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