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140字三題噺 -3rd season

100本完遂済。配布元:色々小説お題ったー

一応の目次

  • 001-025
  • 026-050
  • 051-075
  • 076-100

001-025

かくれんぼ/噛み癖/綱渡り
 鳥と獣が戦争になり、双方から支援要請を受けたコウモリはやむなく一族を二つに分けて応じた。戦後この苦肉の策を咎められ両陣営から石もて追われたコウモリは、自分たちの取り分は必ず貰うと言って身を隠した。以来コウモリは夜になると動き出しては鳥の餌の果物をかじり、獣の血を吸って生きている。

色白/メール/サヨナラダケガ
 友人が若くして世を去った。突然すぎて言葉が無く、白紙の手紙を棺に入れた。その返事でもあるまいが、葬儀の日は雲一つない快晴だった。そのまた返事にと、月命日には花火を上げており、翌日は必ず虹だ。一度だけ虹が出なかった日がある。前日は空いっぱいの羊雲、どうも花火の手紙を食ったらしい。

刃物/三つ編み/夜は短し
 晴天からお下げ髪が長々と下がっていた。引っ張るとカチリと音がして夜になった。仕方なくよじ登った髪は一人の女に繋がっており、彼女が太陽なのだ。天上暮しに飽きた彼女に頼まれ一緒に逃げたが捕まった。かくて天の火を盗んだ私は、切り落した彼女の髪で岩に繋がれ、鳥どもに内臓をつつかれている。

赤/会いたい/サヨナラダケガ
 改修した公園内の移築古民家は腕利きパティシエの菓子でくつろげると評判で、隣室の畳に寝転んで映画を見ながら食べてもいい。園内植物園の鬱蒼とした熱帯林の中の青いタコ滑り台では、森で採れた実を菓子に加工できる。時々、そこから出向いた屋台が近所の巨大複合施設で菓子セッションを催している。

制服/金髪/三秒間
 笑いの止まらない悪魔は、駄目推しに三秒間だけ願いを叶える約束を彼に持ちかけた。考えに考えた末、彼は十分前の三秒を指定した。悪魔は髪を逆立てて怒ったが約束には従うしかなく、結果この話の作者はこの話を書く途中の三秒間悪魔の設定を忘れ、悪魔は書かれないまま物語は進み、誰も死ななかった。

ナイフ/日傘/ペダンチック
 雨の降る直前の匂いが好きだと言っていた姉は洪水に流されて行方が知れない。渇水の地域のすごい機械が作った雲は豪雨を受け止め、僕らはそれをあちらへ曳いていって乾いた湖へ放り込んだ。あっという間に湖は満たされ、溢れた水は地を割って田畑へ流れ込む。姉ちゃんもどこかで笑ってればいいけれど。

イルカ/窓際/夜
 夜、カーテンを閉め切り照明を落とし、旧い角灯に火を入れる。途端私の姿は消え、入れ替りに無数の影が壁に踊る。ヒトの影だけでない、ネコやトリ、巨大なサカナ、目に見えぬほどのムシも。彼岸に渡れぬ幽霊を角灯に招き、灯が落ちるまで躍らせてやる。その間私はどこでもない境目で雨音を聴いている。

青/雨傘/映画
 大蛙と茸が雨夜に化けたのは泉鏡花だが、実際に茸の生えた蛙が目撃された。これは蟻の家畜だ。無害な茸を植えた蛙を動く畑として飼う慣いで、蟻たちは苔むす亀の上に住まう螽斯一族からこの遊牧式農耕を教わった。春の宵、亀の鳴き声に応じて茸が光り、かくて両文明の交信は歌う星座のごとく地を彩る。

怒らないで/悪趣味/トランス
 また水上の人間どもが人身御供の娘をよこした。仕方なく私は泣いている娘を連れて洞穴を抜け、花畑へ赴いた。ここには代々の人身御供を住まわせており、果実も花の蜜も好きなだけ採れる別天地だ。彼らは私を神と慕うがその名は私には重い。確かに私はこの川に棲んでいるが大水を鎮める力などないのだ。

蝶/星空/ぽつり
 今年も蝶がひらひら寄ってきた。羽を見ると私宛ての恋文である。戦に取られ死んだ前夫からだ。お前が恋しい時は蝶に心を託すなどと柄にもない事を言ったせいか虫けらのような最期だったそうだ。今の夫と結ばれたいばかりに前夫を戦に出したのは私だ。まとわる蝶は目をつぶっても闇にちらつき離れない。

薬/葉っぱ/いたちごっこ
 川っぱたにカワウソやイタチが集まり、石の上にカワウソは魚を、イタチは葉っぱを並べている。魚市か薬草市かと一匹に訊くと、祭典ですと言う。なるほど獺祭だね。いいえコミケです。魚の鱗や葉っぱに物語が書いてあり可笑しかったが、考えれば「獺祭」は文学用語だし「言葉」も大昔は葉に書いたのだ。

財布/悪趣味/やきもち
 地元に伝わる文様はもはや観光資源であり、主に多数派民族が製造権を握っている。かつて手縫いされたそれらを今は大工場の機械が大量生産し、果てはAIが流行りに合わせた新柄を考えているそうだ。古ぼけた色の巾着は祖母の手縫いだが、図案はどこかの会社に特許を取られ、絵柄の意味を知る者もない。

青/雪/はつこい
 幽霊話のある兵舎の物置へ度胸試しに放り込まれた少年兵が翌朝、真夏だというのに凍死寸前で見つかった。なんでも、青服を着た見知らぬ娘に、氷のように冷え切った躰で抱きつかれたそうだ。お前逃げなかったとこを見るとまんざらじゃないなと笑う先輩に少年兵は顔を赤らめ、寒そうだったのでと呟いた。

ベッド/前髪/蜂蜜
 眼前にホットケーキが座布団よろしく山積みになっている。いやパンケーキか? とにかく相手は裏カフェ主人と名乗った。いや店主? 混乱をよそに店主は力を借りたいと言う。植物園の植物をみな移し、菓子を植物から育てる計画とか。カカオも? 当然。スパイスも? 無論。蜂は? いいよ。チャンス? 何かの罠?

黄/カッター/災い転じて
 藍の縞模様の大皿へ店主、栗きんとんの粒を点々。五線譜を形どるそれへ芋餡を添えてLet’s JAM。警官もとい栽培マン、栗楽譜に和して生チョコを点々。その譜面を鉄琴もとい七色のソーダグラス琴で奏でる女子高生、ソフト飴製トロンボーンのパティシエ。合わせてスプレー男がポップコーンを盛大に弾く。

耳/窓際/映画
 紫式部は嘘ばかり書いたので閻魔大王の裁きで地獄に落ちた。当然〆切地獄である。常々正直ばかりで嘘に飢えた閻魔大王はこうして作家を地獄に呼んでは物語を作らせ、浄玻璃鏡に映して楽しんでいる。倫理に厳しいが作家の待遇はホワイトで、亡者達への取材も許可されているため作家の評判はそこそこだ。

怒らないで/指輪/不意打ち
 少年兵は少女に残りの文字を教えている。何せ教える側も教わる側も素人とて時間が要りそうだ。旧将軍派も元指導部も体制を立て直せず、首都では連合野党が議会制整備中とか。東の砦も解散の噂があるが先行き不透明で、兵でなくなるかもしれない少年兵は少女に掛けた自分の上着を春の陽光で染めている。

煙草/爪/七転び
 莨入れは借金のかたに取られた。本来は身の周りの品を全て自分たちで作り、金銭など必要ない暮らしだったのが、それを野蛮と言われ貨幣経済に巻き込まれた。莨入れは父の父のまた父から受け継いだもので、熊の神の来歴の物語が文様で描かれている。借金取りは何と言ってあれを子に受け継ぐのだろうか。

ココア/鳥/恥ずかしい
 娘さんが裏カフェ店主のビニールハウス周辺で目撃されたという情報を僕はパティシエに伝えたが、行方不明中の屋台の塗装に既視感があることは言えなかった。捜査継続を約して帰る際にケーキを勧められたが、残念ながら公務員の身とて丁寧に辞した。ココアとマシュマロどっちが先かはついに聞き忘れた。

耳/砂糖菓子/トランス
 この公園を買い取るのが裏カフェ店主の夢だ。落書きだらけのタコ滑り台もヒョウモンダコ色にして、中でカフェをやるそうだ。ケーキとかも出すよと夢見がちだが、もんじゃか何かだろうと睨んでいる。内緒だがその時は学校をやめて屋台で二号店をやる。学校に店の噂だけ流してそっとカラー綿飴を売る。

背伸び/マフラー/駄目なひと
 言うまでもなくこの世で最も低次元で野蛮な生き物は人間だ。知能という迷路にはまって無意味な闘争と破壊に明け暮れ、他のあらゆる生物を巻き込んでなお己を万物の霊長と信じて疑わない。その人間に寄り添う犬こそは全生物至高の存在で、最低の生物と共に生きる苦行を経て彼らは涅槃へと解脱してゆく。

嫉妬/雪/甘党
 やたら物置へ行きたがる少年兵を、すわ憑かれたかと先輩兵士は部屋へ閉じこめた。翌朝は真夏だというのに一面の霜、草花がみな黄色く霜枯れた。彼女の仕業だ、文字を教える約束をしたのに行かなかったからと少年兵が言い、葉を指さした。葉の一枚一枚についた傷は確かに、下手くそな文字にも見える。

赤/雨傘/数式
 彼が真っ赤なコートを着せられたのは泣き虫のせいだ。始終べそべそ湿っぽい彼は曇り空の多いこの街をなお暗くした。これで気も晴れるだろうという周囲の声に反比例して彼の嘆きは増す。僕はしんと静かな青がいいのに。と、街ですれ違う一人の女。曇天にも艶やかなそのコートは彼の望んでやまない青だ。

ココア/白衣/サヨナラダケガ
 ガラスケースの二段ケーキの表面をマーブルチョコが埋め尽している。カラースプレー付きドーナツを連想したがスケール段違いだ。最近こんな注文が多くてとパティシエは苦笑だ。人気店なのだ。お嬢さんは? 本題を切り出した僕に、また家出と相手は顔を顰める。先日彼女を裏カフェごと補導したのは僕だ。

財布/パフェ/夜
 第一戦は両者白塗りのケーキを出した。パティシエがナイフを入れた断面はゴッホの星月夜。中に色付き生地を仕込んだのだ。対する裏カフェ店主のケーキは切ると中の駄菓子が流れ出すギミックケーキで、カラーチョコや飴に混ざって三色あられまで出現、塩気も欲しいよねとの弁。両者楽しく美味で引分け。

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026-050

嘘/いじわる/ぽつり
 今日中に何とかしないとGと同居で地縛霊化させるとの大家の仰せ。死んでも嫌だが僕が死に切らねばGも居残る。頼むから成仏させてくれと大家に土下座しG共々あの世へ赴いたが、門番は僕を審判の列に並ばせGを易々通す。人間以外は無条件で極楽行きだそうで、羨ましすぎるが流石に引き留めは無効だ。

ベッド/ポケット/七転び
 古着屋で買ったバッグはエスニックの布製で、何色もの太い糸がジグザグ模様を織りなしている。古物市で買った品々を入れたところそれらが喋り出し、僕が完全な話を覚えるまで黙らないという。いずれも文字を持たないか文字の現存しない言葉で、僕はそれらを連れて旅の空に欠けた来歴を訪ね歩いている。

刃物/砂糖菓子/映画
 広告会社は悪魔と契約し、必ず視聴者の目に入るCMを作って貰った。悪魔の作ったホラー映画のCMをオンエア中に見逃した視聴者はTVを消した後、カーテンの、白壁の、布団の上に幽霊を幻視した。大クレームを受けた悪魔は食品のCMを作り、見逃した視聴者はカーテンの、白壁の、布団の上にアイスを幻視……

薬/日焼け/自己防衛
 六回を終え勝負は一進一退、火花散る熱戦どころか艦砲射撃の応酬である。僕はと言えば試合を追うのもやっとの運動音痴、敵(実家)の支援どころかよりによって飛んできた長姉のエラー球を味方(他家)の長兄怖さに見事キャッチ。お兄たんスゴい、味方(他家)の幼児二人に和む僕に長姉の拳がめり込む。

赤/落し物/はじめて
 かくて出現した「動的菓子」に店主と栽培マンが缶入りナッツを振って砕くナッツマラカス、老王が茶筅の音も細やかに加わり、ここに成立した大々的なセッションを経て今夜完成した全ての菓子を茶とともに全員が楽しんだ。最終結果として契約が結び直され、老王はパティシエの新店舗のパトロンとなった。

黒/マフラー/恥ずかしい ※1回多くガチャ引いたのでオマケ
 出会った瞬間、彼女と彼は互いを理解し、二着のコートが即座に取り替えられた。赤をまとった彼女の短気も、青をまとった彼の泣き虫も相変わらずで、周囲は落胆したが、二人は相手の服の色が見えた方が便利じゃないかと意に介さず、今日も一対のコート、お揃いの赤青縞のマフラーで曇天の街を闊歩する。

制服/砂糖菓子/夜
 学校帰り、裏カフェに寄る。自前で直したオンボロ屋台をキッチンカーと言い張るのには閉口だが、これの方が夜に似合う気もする。ワンコインでドリンク(半欠けの湯呑に焙じ茶)をもらい、スイーツ(木枠で仕切られた金平糖やらガムやら煎餅)を選んでよい。もう十円出せばミニ麺にお湯を入れてくれる。

月/パフェ/いたちごっこ
 合作式の第三戦。焼きたてクレープ一枚目は店主、チョコで素早く書くのはリスの絵。その上に乗せた二枚目にパティシエは生クリームでスズメを描く。言うまでもなく絵しりとりで、続く計二十枚ノーミスで出来上がったミルクレープを「間のしりとり全部言えた人は食べていいよ」との店主の言に全員撃沈。

身長/ピアス穴/甘党
 菓子店の新ディスプレイは巨大ステンドグラスクッキーで、文字を型抜きしカラフルな飴を入れた部分は文章だ。と言うか裏カフェ店主に向けた公開挑戦状で、菓子対決らしい。と告げると店主は爆笑し、僕にホットチョコを作らせた。と言うかフォームミルクを乗せ、そこへカカオパウダーで返信を書くとか。

深海/窓際/災い転じて
 シャチを知っているのは猫とテントウムシの他はおばあちゃんだけで、おばあちゃんはシャチを人間の次の世のさきぶれと考えている。ほどなく、おばあちゃんが電気を消した屋根の上をシャチが泰然と行き過ぎる。じき暖かくなればおばあちゃんはテントウムシたちを窓から日なたの側に出してやるつもりだ。

買い物/雨/綱渡り
 海が干上がり千年、強烈な日差しを避け人類が暮らす海跡は地上よりよほど峻険だ。隠れ場所には事欠かぬが足を滑らせれば千粁を真っ逆様、必然、谷と谷を結ぶ綱が道となる。ゴンドラを持たず橋賃も払えぬ者は違法な綱渡りを覚え、今日も身一つで地獄を越える彼らを、谷を満たすには浅すぎる豪雨が叩く。

煙草/乾き/シュレディンガーの猫
 家の老猫が隣の犬を呪うとか。追いかけ回され車に撥ねられかけたからだそうだ。どこで覚えたのか尾を二股に割りドロドロ言う煙幕付きで突撃していったが、大喜びで尻尾を振るテキに迎えられ、尾の数が自分より圧倒的に多く見えるとの理由であえなく敗走。屈辱で霊力が増しており別の意味でなんか怖い。

青/煙/数式
 彼女が真っ青なコートを着せられたのは短気なせいだ。曇り空の多いこの街には始終かっかと火を吹く彼女は熱過ぎた。これで落ち着くだろうという周囲の声に彼女の苛々は加速度的に増す。あたしはぱっと明るい赤がいいのに。と、街ですれ違う一人の男。曇天にも鮮やかなそのコートは彼女の焦がれた赤だ。

黒猫/ピアス穴/蜂蜜
 承諾の印に引き寄せたパンケーキは全部色違いで、琥珀糖のイメージだという。上の絵柄はどうしてかタコでどうしてかブルーベリーの紫だ。このパンケーキは仲間候補のシンボルだそうで、秘密結社の旗みたいなもんだよと店主は言う。さて君は蜂蜜かな? チョコがいいです、いえカカオドリンクがいいです。

四つ葉/茶髪/自己防衛
 花壇の隅で同級生の女子がダリアを鍵盤代りに弾いている。花弁一枚一枚の音色はカリンバの繊細さだ。蛍袋を撫でるとガラスの反響。すげえな、俺の声に彼女はありがとと答え、俺の髪に触れた。雪の音さながらさざめく髪は校則無視の赤で、いい音ねと褒められた照れ隠しに毟った四葉で彼女は小曲を弾く。

月/マフラー/シュレディンガーの猫
 いつの世のつもりか、月夜に老猫は正体不明のヒーローよろしくマフラー姿、隣近所の猫共お誘い合せで出陣。迎える犬が月光に吠え、方々の犬共も呼応し正に一触即発。しかし犬を嫌う猫の気持ちと猫と遊びたい犬の気持ちが重なって両立、めんどくさくなった猫が解散して無効試合。老猫が不貞腐れて怖い。

餅/噛み癖/癖
 囲炉裏で炙った餅へ丹念に砂糖醤油を塗しながら、老主人は自分の死後この家を引き取れと縁起でもない。毎度なので聞き流しつつ餅に食らいついていると、君は菓子職人だからきっと活かしてくれると言う。彼の余命はさておき、確かにこぢんまりしながら風格のある家だ。お客様が寛いで菓子を楽しめよう。

首筋/小鳥/不意打ち
 誰も知らなかったが政変は終わっていなかった。かつての将軍派の流れをくむ者たちが北部で突如叛旗を翻し、首都目指して進軍中という。こちら東部の最果てに報せが入ったのは三日後で、ここまで飛び火はせんだろうと他の兵士は呑気だが、それ以来蒼服の少女を見た者がおらず少年兵はじりじりしている。

カーテン/餌付け/迷宮
 巨大なシャチが夜のビル街を回遊する。ひとけのない都市は石の灰色で、シャチが時折覗く窓はみな暗い。ビルの谷底にぽつんと点るのは旧い家の灯で、暮らすのはおばあちゃん一人だ。おばあちゃんが猫三匹を寝かしつける布団の横の柱には越冬中のテントウムシたちが固まり、猫と同じ枯葉の夢を見ている。

背伸び/パフェ/はじめて
 第四試合は団体戦。店主側は本人、女子高生、スプレー画家、チョコ栽培男だがパティシエ側は、と思う間もなく僕にご指名。なぜか店主が大喜びで、門外漢ほど面白いとか。かくて情け無用のドリンク勝負、僕はグラスにブラックチョコとミルクの二層+チェリーと桜乗せでパトカー表現、店主にだけ大受け。

首筋/キス/夜は短し
 三重ガラスの防寒窓一面に白い夜が渦巻く。学校のホールは暖かく、背後のパーティはたけなわだ。地元の子は皆この後帰宅だが、私たちは同棟の寮に残る。それでも元首都の子は友達も多いが私の出身地の子は他にない。巨大災害でこの国の居住適地はここだけ、雪嵐の奥にその原因の巨獣が美しく闊歩する。

制服/小鳥/不意打ち
 しかし東部の砦への襲撃は迅速だった。クーデターを察知した現指導部が密かにこの東部を抜けて隣国へ飛んだのだ。兵舎を占拠した旧将軍派は兵士たちに現指導部の行方を吐かせようとしたが、知る者はなく、業を煮やした旧将軍派は見せしめとして戦場の沈黙でもって染めた特注の拷問帽を少年兵へ被せた。

黄/餌付け/八重歯
 私ねえ食べ物で遊んでいいと思うんですと店主。ちゃーんと全部おいしく食べるならね。食べ物「と」遊ぶってのが正しいかな。言いながら店主は巨大クッキーを余った菓子で飾り始める。カラーチョコ、ケーキ生地、綿飴にゼリーに果物。多様なそれらは色のみで分けられ、雑多で美しいモザイクの虹となる。

嘘/マシュマロ/映画
 空家は友人の祖父の家だった古民家だ。二十畳敷ほどの大きな広間を友人はミニシアターにしたがっている。床の間側がスクリーンで席はビーズクッション寝転び自由と夢は尽きない。焚火でマシュマロを焼こうとするから、残家財の薬品が付いたらどうすると止めるが、祖父さんの念が着くぜと口が減らない。

黒猫/雪/自己防衛
 老兵の話では、昔の政変で失脚した将軍の愛妾の少女が捕まり例の物置で将軍の居所を尋問された。反乱側は新雪の蒼い陰でもって染めた特注の拷問服を彼女に着せたが、彼女が文盲の唖者と判ったのは凍死後だった。猫のように丸まって寄り添う少女の体の冷たさに顔色も変えず、少年兵は文字を教えている。

財布/チョコ/夜
 カカオを育てる畑が欲しかったが、そもそも日本ではまず育たないらしいうえ、街路樹の根元へ勝手に植物を植えてはいけないそうだ。仕方なく、カカオを鉢に植え替え、夜中に近所のビニールハウスにそっと置いておいた。よく考えたら砂糖も要るので、明日また園芸センターに行ってサトウダイコンを探す。

▲

051-075

天使/鳥/映画
 雨の日曜、納戸で見つけた赤いトイピアノを弾いていると、天使と手を繋いだワンピースの女の子が出た。病気で亡くなったこの屋敷の子といい、天使と二人で合唱していた。人間には聞こえない歌だが、「埴生の宿」だと分かる。庭では鴉が木の枝からじっと動かず、天使の立っていた台座が雨に濡れている。

身長/雨傘/幸せ
 日傘はお洒落のひとつなのよと言っていた祖母の死因は記録的酷暑による熱中症だった。研究のすえ特殊な雲を開発した私の研究所は豪雨に苦しむ地域の協力を得てその地域を低い雲で覆った。降りしきる雨を全て受け止めた雲を両地域の人足が私の街へ曳いてゆく。二つの言葉の掛声は不思議にぴたりと合う。

刃物/前髪/不意打ち
 首から上を拷問帽にすっぽり覆われ、物みな死に絶えた沈黙を聴かされた少年兵が失神する寸前、縛られているはずの掌に冷たい何かが触れた。何かは手の上をそっと滑る。それが「ゆき」という字なのを少年兵は感じた。蒼服の少女に教えた数少ない字のひとつだ。ゆき。ゆき。死の沈黙は雪の静寂へ変わる。

ベッド/マシュマロ/八重歯
 久々によく分からない物を拾った。今回のよく分からない物は白く丸々太ってガラスのように固い。実は他にもヨタカと亀の中間くらいの声で鳴くよく分からない物と細長くて夕方頃に尖るよく分からない物を持っているのだが、ベッドの下に三つとも置いておいたら冬曇りの明け方にそっとコーラスしていた。

深海/チェス/腰痛
 乙姫と人魚姫の将棋対決が今年も始まった。よく訓練された色とりどりのタツノオトシゴを駒に、一進一退の攻防が続く。終盤、敵陣に攻め込んだ乙姫側の飛車がついに王手をかけ、勝負有りと思われた時、人魚姫側の王将が出産を始め、大量の子(歩)が盤面を埋め尽くして形成逆転に見えたが、二歩で失格。

背伸び/青空/ひとりぼっち
 死んだ母親へ会いたさに少年の背はどんどん伸びた。村じゅうの大人も家々の屋根も追い越し、遂に雲の上へすぽんと頭が出た。そこは眩いばかり真っ青が広がるだけの世界で、下を向いても雲に阻まれ村は見えない。彼の涙は下界で雨となって植物を巨大に育て、親友のジャックは彼を目指して豆の木を登る。

バイク/前髪/不意打ち
 少年兵が拷問帽を外された時、周囲の旧将軍派はみな凍死寸前で捕縛されていた。時同じくして、首都の旧将軍派も同様に凍死寸前で壊滅との急報が届いた。なんでも、旧将軍派はかつて一人の少女を囮に逃げ、彼女を殺したのが現指導部だと、議事堂の壁に氷で拙い文字が残っており、どうしても消えない由。

メモ/いじわる/三秒間
 女王が意に沿わぬ村を罰したのは事実だが、石臼で村人全員を挽いたなど流石に嘘だ。手間が大きすぎるし働き手も減る。その成り行きを記した書は滅ぼされ、そもそも言葉も禁じられた。読む者とて無い石碑のかけらはビル街に埋もれ、また別の戦で焼かれては掘り返され、埋もれを繰り返し幾星霜かになる。

バイク/独り言/シャングリラ
 近所の三文文士が締切前の大不調なので、戯れに居眠り中の奴の眼鏡に原稿用紙の升目を書いてやった。目覚めた奴は慌てて眼鏡をかけ漫画のように周囲を見回したが、案に相違して猛然と原稿を埋め始めた。それ以来、升眼鏡は奴の御愛用となったが、奴の口から出るのは森羅万象の乗り移った語りばかりだ。

天使/扇風機/映画
 蚤の市で買ったフィルムを回している。部屋は映写機のからから回る音と古ぼけた扇風機の音。どこかのホームビデオの中、ワンピースの女の子が無言で踊る。と、その子に被るように現れた人影。背中に羽を持ち、こちらへ向けて顔をしかめて舌を出した。瞬間、フィルムがあっという間に燃えて無くなった。

白/爪/憂鬱
 なら儂を唸らせてみるがいい。ラスボスばりに登場の白髭の老翁に店主以外全員唖然、聞けば不動産王かつ古民家の主人で甘味と祭騒ぎに目がない奇人。公園と植物園を再開発した跡地の複合施設にパティシエの店のリノベ古民家が入る旨、嫌なら今勝ち取れと老王。面白いから最終戦にお招きしたよーと店主。

怒らないで/キス/胸元
 帝国は結局、最重要標的の忍者二名……火付者と山駈衆の指名手配を解かざるを得なかった。手配書を出せば署名した者が即日討たれ、現場が怖気付いたのだ。以来両名の行方は杳として知れず、死んだとも他領へ逃げたともいう。あるいは身一つを自身の国土とし、帝国内の独立国となり暴れ回っているとも。

首筋/茶髪/トランス
 南方の私の故郷で温泉が出て水脈が変わり、地底の巨獣が現れた。迷惑客に飛び乗られた一頭が暴れ出し、駆除が逆に巨獣の大侵出を招いて今に至る。巨獣と人を慣らし、徐々に巨獣を制御し共存を図るための人材育成が巨獣学科の主目的で、山中の寮の露天風呂は、真下の温泉につかる巨獣の頭と同じ高さだ。

かくれんぼ/煙/猫も杓子も
 ゲリラを大半捕らえてなお帝国忍者隊の安らがぬ日々は続く。逃走中の残党に最重要標的…腕利きの火付者と山駈衆がいるのだ。火付者は街中で騒乱を煽り外敵を引き込む忍者、山駈衆は包囲網を突破し伝令・逃走補助を担う忍者だ。件の二人に帝国は幾度も煮え湯を飲まされ、先日も追手が死体で見つかった。

かくれんぼ/煙/猫も杓子も ※おかわり
 何で読んだか老猫が隣の犬小屋の鋭角の屋根に狙いを定め、そこから青黒い煙が立ち昇るや犬を置いて脱出。しかしテキは鼻の効く生物のこと、刺激的な悪臭が漂いだすや三つの頭でハクションを連発、風圧と鼻水で煙はあえなく霧散した。物陰から一部始終を目撃した老猫はついに全面対決を決意。もう怖い。

炭酸/ピアス/雨垂れ石をも
 屋台を引いて行こうとする女子高生を止めると、いや私が貰う約束だからと言う。固そうな外見に合わず自分で開けたらしいピアスが光る。いや祖父さんの残家財で作った屋台だし塗装も俺だしと言うと、いやカラー綿飴売るしと言う。いやそこは琥珀糖ソーダだろと言うと、それ自分考えたんでとドヤられた。

嘘つき/ポケット/猫かぶり
 俺の目の黒いうちはこの土地で商売させぬと悪徳地主が言うので、私は大風呂敷一枚広げている。その上で蓑虫は古着を売り、烏は骨董を並べ、小人は豆本図書館を出し、近所の猫もコーヒーを淹れるミニ市場だ。面子が次々増えるのを見た蜘蛛たちが拡大用に筵を編んでくれており、余りは無論次の市に並ぶ。

カーテン/茶髪/猫かぶり
 やけになったか老猫が正攻法とて隣家にカラ身で突撃。犬猫交えてギャオンギャオンが始まった。と、出てきたのは隣家の美人お姉さん、「あらあらどうしたのー」の声に犬猫同時にお腹を出して全面降伏。臆面もなく可愛がられる姿を窓から呆然と見る僕に気づいた老猫が睨んできた。次の標的は僕か。怖い。

ミルクキャンディ/麦茶/シャングリラ
 どれも必要な場所だと店主。植物園で菓子の原料を育て、タコ滑り台の中で製造販売し、屋台は出店にする。古民家はと問うパティシエに、あんたの新しい店だよと店主。やりたいのはそんな店でしょうが。パティシエは沈黙し、ドリンクを出した。熱いお茶と単純なミルク菓子。やりたいのはそれだったのだ。

制服/チョコ/ブラック
 バニラとトウガラシを買って帰ると、植物園の温室は閉め切られ真っ暗だった。経営破綻していて昨日が最終日だったとか。仕方なく、夜中にガラスを割って鍵を開け、カカオとサトウキビを運び出した。他の植物たちの濃い匂い。滅んだ植物園に彼らが残されたのか、彼ら以外滅んだ世界に僕が残されたのか?

嘘/白衣/猫も杓子も
 何に倣ったか尾を九本に増やした老猫が隣の犬にリベンジを計る。が、やはり大喜びで出迎えたテキは誰に習ったか頭が三つに増えており、三つの頭に尾を三本ずつ追われて現場は大混乱である。ほうほうの体で逃げ帰ってきた老猫は作戦を変えるとかで僕の部屋にこもり、何やらブツブツ本を読んでいて怖い。

ココア/マシュマロ/満たされる
 カップ一杯のココアにマシュマロを浮かべるか、カップ一杯のマシュマロにココアを注ぐかで意見が割れた。僕はマシュマロが綺麗に見えるから前者、友人はマシュマロがちゃんと溶けるから後者。空家の不要な残家財を燃やす火で湯を沸かしながら、ところで牛乳入り前提かと友人が再び不穏な言葉を発する。

炭酸/蝶々/大嫌い
 裏カフェが摘発された。常連だったどこかの学生が親にバレたのが原因らしい。店主は逃げ切ったようで空の屋台が転がっている。コンビニのラムネは安い味で、プラ瓶越しに無数の泡が舞うタコ滑り台はやっぱり落書きだらけだ。俺はその上から青スプレーを吹いた。ありったけ吹きつけてもまるで足りない。

嘘つき/十分間/災い転じて
 十分だけ願いを叶えるという悪魔に、彼は三十年前の十分を指定した。家族旅行に出かける時間を十分遅らせたのだ。結果飛行機に乗り遅れた一家は墜落事故を免れ、彼の家族も死なずに済んだ。が、キャンセルした航空券を取って全員亡くなった別の家族の一人はそののち彼の恋人となったはずの少女だった。

太陽/ポケット/夜は短し
 太陽派に敗れた月派は地下に潜り、宿敵が彼らを忘れ去り隆盛を極める中再び動き出した。頭上の炎天に怯えつつも彼らは隠し持った月型のシールを街の路地裏という路地裏、物陰という物陰に貼り回る。やがて陽が落ち、怨敵の力たる日光を存分に蓄えたシールはこの世ならぬ月光となり地上を燦然と満たす。

黒/伊達眼鏡/ジキルハイド
 特訓の甲斐ありついに幽霊屋敷の主に三勝したが、彼は成仏どころか好敵手との別れをやたら悲しむ。仕方なく再訪を約して帰ったその日から烏や黒猫が催促の手紙を付けて続々来訪、観念して友人一同引き連れ流行りのボードゲームを持参したところ大喜びされ、徹夜勝負となったがテキは幽霊、眠気が無い。

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076-100

蝶/ピアス/駄目なひと
 現職は広大なゴミ屋敷の清掃だ。何せ宇宙戦争で住民が全滅した星を丸々片付けるのだ。狭い星じゅう瓦礫だが短期間で壊滅したためさほど汚染はなく、環境汚染で母星を壊した我々地球人が紹介された中で唯一マシな移住先なので是非もない。こんな地にも生態系はあるらしく、蝶一匹がまるで灰燼の宝石だ。

白/一重/胸元
 かくて役者が揃い、まずは小手調べ。老王が立てた茶はえも言われぬ芳しさと共に一同の腹中に落ち、続く練り切りは互いを更に高めつつあくまで穏やかだ。ワシの複合施設はこうあるべきだ、全施設が噛み合い、人々の必要と楽しさを満たしながら安らぎを旨とする。練り切りの形どる施設ロゴは単純な美だ。

不幸/ピアス穴/バタフライエフェクト
 瓦礫撤去が半ば済んだ星を宇宙政府は他に移れという。例の蝶は地球由来の希少種で、地球では汚染で既に絶滅、宇宙でも希少性から奪い合いが戦争になった由。この星は蝶に与えられ、地球人始め全宇宙人立入禁止となる。人類への、これは蝶の復讐か、旧星人の呪いか。何も知らぬ蝶の飛び立つ姿は美しい。

文字/鳥/いたちごっこ
 王は威厳を示すため山頂に自分の像を建て、日ごと像の影は王の威容と共に国を覆う。ある日誰かが反対の山に巨大な鏡を置き、陽光は像の影を城まで反射した。鏡には毎日落書きされ、像の影に台詞やら天使の羽が付く。王は面白がり、巨大な鏡を作らせて政策や座右の銘を書き、毎日毎日国中に反射させた。

色白/チョコ/いたちごっこ
 サトウダイコンは寒い場所でしか育たないらしいのでサトウキビを買って帰ると、ビニールハウスからカカオが出されていた。仕方なく、カカオとサトウキビの鉢を夜中に近所の植物園の温室にそっと置いておいた。よく考えたらスパイスも要るので、明日また園芸センターに行ってバニラとトウガラシを探す。

黄/ピアス穴/憂鬱 ※1回多くガチャ引いたのでオマケ
 そのためにはまず調和と落ち着き大事、同意ですね、それでこそこっちのハジけ甲斐もあるってモンで。店主の言葉に、違いないなと老王が出してきたのはクチナシの黄も艶やかな大粒栗きんとん。さてどうするね、ニヤリと問われた店主もニヤリ、綺麗に片付いた作業台へ老王含め全員を招く。さあお祭りだ。

かくれんぼ/いじわる/癖
 敗戦国の武装解除は今や帝国の難題だ。敵の忍者のほとんどが投降せず抵抗を続けているのだ。敵国は小さいが強力な独裁体制で、擁する忍者には少年も数多い。という事の意味を帝国の忍者は思い知っていた。今追う忍者二人はどう見ても自分の歳の半分だが腕はすさまじい。キャリアが自分と違わないのだ。

かくれんぼ/いじわる/癖 ※おかわり
 生者の怨念が死者の成仏を妨げたのは史上初ではないか。事故死した僕を引き留めているのは僕が汚部屋にした賃貸の大家で、怒りの圧が人間と思えない。命令通りGの棲家たる食品ゴミの山の処分にかかったが、殺虫剤を食らったGが僕を尻目に次々昇天、羨ましすぎて僕が引き留めたらしく全Gが地縛霊化。

首筋/葉っぱ/はじめて
 私達が首の皮一枚で生きているのは南北に長いこの国の最北端、この地の極寒のおかげだ。数十種に及ぶ巨獣のうち寒さに強いのはごく一部。辺境といわれたこの街に生存者が集まり、唯一の学校もそれなりの規模だ。吹雪が切れ、地元の子が一斉にバスに乗る。バスが下る先の街灯りが窓の遥か下にちらつく。

買い物/ポケット/猫かぶり
 俺の目の黒いうちはこの土地で商売させぬと悪徳地主が言うので、商人達は空中に活路を見出した。当初は樹上にテラスを繋いで市が立ち、樹間をハンモックカフェが彩ったが、反重力鉱石が見出されてからは文字通りの空中商路だ。鳥と聞きまごう様々な売声、彼らの曳く旗や吹流しは狭い領土を易々越える。

ベッド/日焼け/ペダンチック
 布団に寝転ぶ僕を幼児二人が踏んでマッサージしてくれる。結局15回引き分け後、両家は我が家の居間で親睦雑魚寝お泊り会だ。蓋を開ければ僕一人が両家の長子に殴られまくる展開で、抗議すると、要領の良さが父に似てると全員が即答。災い転じて福と成せ、いい事言った風の父を幼児の暴投球が捕えた。

嫉妬/茶髪/ひとりぼっち
 ともあれ双方全員で対面、母親二人も加え二チーム対戦へと雪崩れ込む。あちらの兄妹九人のうち二人は幼児とてなぜか僕が貸し出され、情け無用の九回勝負が開幕。頼んでもいないのにジャッジに立つ父の開口一番「プレイボォォーイ!」を怒髪天の長姉のバット、あちらの長兄のボールが物理的に黙らせる。

ナイフ/パフェ/蜂蜜
 女子高生はカラー綿飴in炭酸水。スプレー画家はピーベリー+レモングミの青変茶。栽培マンはカカオ+蜂蜜+唐辛子のインカドリンク。これは我々の要求だと店主。カラーサイダーは屋台、青茶はタコ滑り台公園、古代チョコは植物園。そして店主はタピオカもとい粒餅inきな粉黒蜜ドリンク。古民家だ。

月/マシュマロ/甘党
 実のところ古民家は人手に渡ることが決まっており、残家財は今週中に処分せねばならない。夜までかかってあらかたの家具を始末し終え、残りは週末に回した。古着や戸棚を燃やして爆ぜる焚き火をじっと見る友人はさっきからずいぶん無口だ。とりあえずクッキーに挟んだマシュマロは旨いと合意に至った。

耳/窓際/綱渡り
 魔王を倒した勇者の治世が始まったが、庶民の歓迎は短かった。曰く隣人の騒音がひどい。曰く凸凹道が直されない。農民は重税を嘆き、商人は豪商の専横をぼやき、政府の不満処理業務は果しなく続く。倒された魔王の安堵顔の意味を元勇者が悟った時、辺境で魔王はうきうきとクレームの文案を練っている。

白/落し物/腰痛
 じいちゃん病院はとスプレー男。若い連中にウジウジされちゃ入院もできんわと老王、言うまでもなくスプレー男の祖父。じゃパパ根性決めてママと組みなよと女子高生。言うまでもなく裏カフェ主人はパティシエの妻。スプレー男は僕に、お前チョコで援護射撃な。言うまでもなく僕=警官=チョコ栽培男だ。

制服/血清/数式
 破産した私に借金取りが勧めた高額バイトはバールのような物を使うらしい。強盗ではないから大丈夫大丈夫と何の慰めにもならない慰め方で連れられた先は廃倉庫で、巨大な魔神像の前で儀式が行われており「生命保険の1%は実家に払っとくから」と言われながらそのバアルのような者に魂を喰われている。

背伸び/爪先/恥ずかしい
 銀河の彼方、地球とか言う辺境の星から生物引取依頼が届いた。国交のない星からの話は通常受けないが、見れば生物に対し地球は小さく、件の生物は地球民には巨大怪獣、しかも一匹限りの突然変異だ。引き取った方が幸せだろうということで「怪獣」は宇宙動物園の小動物ふれあいコーナーで愛されている。

深海/犬/ジキルハイド
 嵐の夜に迷い込んだ荒野の幽霊屋敷で望外な歓待を受けたが、気難しそうな老主人はチェスで三度勝たねば帰さないという。受けた勝負で手も足も出ず、このまま地縛霊化を覚悟したが、主人は意外にも手取り足取り教えてくれる。老執事囁いて曰く、主人は無類のゲーム好きだが訪う客とて無く成仏できぬ由。

かくれんぼ/カッター/三秒間
 ナイフの柄に彫られた祖先のトーテムは私の代で意味を失うのだろう。どこかから来た人々に追いやられ私たちが移住した先は疫病の巣で、全員を滅ぼすのに時間は要らなかった。ナイフを地に突き立て、私は力尽きるまで祖先の来歴の歌を囁き続ける。ナイフは墓でなく、聴き役でもなく、私たちそのものだ。

文字/血清/刺
 出鱈目な物語を自由に喋っていた頃、私の言葉は好き放題に繁り、生でかじると青臭さと香味が何とも旨かった。なのに最近口をついて出る言葉は愚痴やら陰口、どう料理しても筋ばかりでえぐい。それでも自分の言葉なので、毎夜手を痛くしながらすり潰してはお茶に煮出し、それなりの味にまで持っていく。

嫉妬/金髪/駄目なひと
 「一家で野球をする」が父の口癖で、当然の結果として僕らは九人姉弟だ。その父にひょんなことから隠し子が発覚、問い詰めるとあちらの兄妹も九人だという。ほら試合には二チーム要るだろという言い訳の途中で怒髪天の長姉が父をぶっ飛ばし、泣き崩れる母に寄り添う子供一同、修羅か般若の面相である。

耳/パフェ/癖
 問答式の第二戦。店主の出した固まる前のゼリーへパティシエは素早く琥珀糖を仕込み、パティシエのパフェの土台を店主は慣れた手で飾りにかかる。かくてゼリーは甘い熱帯魚の泳ぐ珊瑚礁の海を表したスノードームと化し、パフェにはクリームと果物のタコ滑り台がそびえ立つ。食べるのが勿体無く引分け。

不幸/一重/憂鬱
 花に花言葉、石に石言葉があるように、虫にも虫言葉があるのですとカマドウマが言う。自分は「勇躍」。カメムシは「一念」。テントウムシは「仲良し」。どれも縁起物でしょと言うので思わず越冬阻止のバルサンの手を止めた。もっとお教えしましょうという彼に訊きたいが訊けない。ヒト言葉はあるのか?

傷跡/砂糖菓子/猫も杓子も
 裏カフェはスイーツもリサイクルで、スーパーの期限切れの琥珀糖が今日のメインだ。ドリンクをソーダにしてもらって琥珀糖を入るだけ入れ、カフェの置かれた公園の街灯に透かす。ごみだらけの公園もその時だけは流石に綺麗に思えるが所詮は錯覚で、私がそう言うと店主は違いないねと隠すそぶりもない。

深海/チェス/ぽつり
 銀河の彼方より飛来した宇宙船団が外交相手に選んだのは鯨だった。万物の霊長を自認する人類をハブって協定成立、ゲームや合唱、どうやってか貿易や交換留学などなど交流は盛り上がっている様子だが、やり取りは全て人間の可聴域を超える音波に乗った未知の言語に基づき、人類に介入の余地は未だ無い。

薬/悪趣味/猫も杓子も
 沼の水を飲むと山に取られる。噂を面白半分で試したが何も起きず、拍子抜けして戻ると村は廃墟と化していた。スマホは不通、住民?も得体の知れぬ服で顔貌も言葉も歪んでいる。逃げ戻った山中で迷い込んだ集落の人々はまともだが全員が水を飲んだとか。ここ以外の全人類には僕らが歪んで見えるそうだ。

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